医学部の症例報告(ケースレポート)の書き方2026|投稿までの手順を順番に解説
症例報告(ケースレポート)の書き方とは、患者から同意を得て情報を匿名化し、CAREガイドラインに沿った構成で序論・症例提示・考察をまとめ、医中誌Web・PubMedで類似例を確認したうえでバンクーバー方式の文献を整えて投稿する、一連の執筆手順を指す。医学生や研修医が最初に挑戦する学術論文の形式として広く使われている。
症例報告は「珍しい病態を見た」だけでは通らない。編集者が知りたいのは、その症例が既存の知見にどんな一手を加えるのかという点であり、患者保護の手続きと文献的位置づけの両方を欠かさず示す必要がある。以下では、着手から投稿までの流れを番号付きの手順で解説する。
要点症例報告は①患者の同意取得と匿名化、②CAREガイドライン準拠の構成(序論・症例提示・考察)、③医中誌Web・PubMedでの類似例確認、④バンクーバー方式での文献整理、という順で進めると学術的な抜け漏れを防ぎやすい。投稿前には目標誌の投稿規定を必ず確認する。

ステップ1 患者から同意を得る(インフォームド・コンセント)
執筆に着手する前に、症例報告として公表することへの同意を患者本人(未成年や意識障害がある場合は代諾者)から書面で取得する。多くの学会・雑誌は投稿時に同意書または同意取得の記録を求めるため、初期の段階で所属機関の倫理委員会に確認しておくと後戻りが少ない。
ステップ2 個人情報を匿名化する
氏名・生年月日・診療録番号・勤務先・居住地など、個人が特定できる情報を本文・図表から除く。画像所見や写真を掲載する場合は、目の部分を隠す処理だけでは不十分なケースがあるため、識別可能な特徴が残っていないか複数人で確認する。日付は「入院第○病日」のような相対表記に置き換えると、時系列を保ちながら匿名性を高められる。
ステップ3 CAREガイドラインに沿って構成を組み立てる
CARE(CAse REport)ガイドラインは、症例報告の質と再現性を高めるために国際的に用いられているチェックリストである。タイトル・キーワード・抄録・序論・患者情報・臨床所見・タイムライン・診断評価・治療的介入・経過と転帰・考察・患者の視点・同意という主要項目に沿って骨子を作ると、抜け漏れなく執筆を進められる。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| タイトル | 診断名または介入名+「症例報告」であることを明示 |
| キーワード | 診断・介入を表す2〜5語(「症例報告」を含む) |
| 抄録 | 主訴・臨床所見・診断・介入・転帰・結論を簡潔に要約 |
| 序論 | この症例がなぜ報告に値するかを文献を交え簡潔に説明 |
| 患者情報 | 既往歴・家族歴・心理社会的背景など関連情報 |
| 臨床所見 | 身体所見・重要な臨床的発見を記述 |
| タイムライン | 経過を図または表で時系列に整理 |
| 診断評価・治療的介入 | 検査・診断根拠・治療内容を具体的に記載 |
| 経過と転帰 | 治療反応・有害事象・フォローアップの結果 |
| 考察 | 症例の強み・限界、関連文献との比較 |
| 患者の視点・同意 | 可能であれば患者自身の感想、および同意取得の明記 |
ステップ4 序論を書く(症例の意義を明確にする)
序論では、既存の知見を1〜2段落で整理したうえで、今回の症例がどこに新規性・希少性・教育的価値を持つのかを明確にする。「なぜこの1例を報告するのか」という問いに答えられていない序論は、査読段階でリジェクトの理由になりやすい。
ステップ5 症例提示(病歴・検査・治療経過)をまとめる
主訴、現病歴、既往歴、身体所見、検査結果、治療経過、転帰の順に、事実を淡々と記述する。この段階では解釈や考察を混ぜず、後の考察セクションで根拠として使えるよう、日付・数値・単位を正確に記録しておく。タイムライン図や検査値の推移表を添えると、読み手が経過を把握しやすくなる。
ステップ6 考察を書く(類似例と比較する)
考察では、今回の症例を既報の類似例と比較し、一致点・相違点、臨床的な示唆、限界を述べる。類似症例の網羅的な確認には、国内文献であれば医中誌Webを、国際文献であればPubMedを使い、診断名・介入名・関連キーワードを組み合わせて検索する。医中誌Webにはキーワードが思いつかない場合に文章から類似度の高い文献を提示する検索機能もあり、少数例しか報告のない疾患の先行報告を探す際に有効である。
ステップ7 バンクーバー方式で参考文献を整える
医学系雑誌の多くはバンクーバー方式を採用している。本文中の引用箇所には登場順に番号を振り、文献リストもその番号順に並べる。著者名は姓+名のイニシャルの順で記載し、著者数が多い場合は雑誌の投稿規定に従って一定人数以降を「et al.」とする。下書き・推敲の補助としてTesify(AIで卒業論文・修士論文を書く)を使い、文献リストの体裁統一や文章の見直しにかかる時間を短縮する学生もいる。

ステップ8 推敲して投稿する
指導医・共著者に通読してもらい、事実関係と匿名化の抜け漏れを再確認したうえで、投稿先ジャーナルの投稿規定(文字数、図表数、引用文献数の上限など)に合わせて体裁を整える。多くの雑誌はCAREチェックリストの提出を求めるため、各項目がどこに記載されているかを対応表としてまとめておくと投稿作業がスムーズになる。
卒業論文や修士論文でも構成の考え方は共通する部分が多い。全体の流れを俯瞰したい場合は卒論の書き方ステップ2026も参考になる。また、報告する症例そのものの着眼点に悩む場合は研究テーマの探し方5ステップ2026、医中誌Web・PubMedでの網羅的な検索手順を詳しく知りたい場合は文献検索のやり方2026を参照してほしい。分野は異なるが、同じく調査法選択から執筆までを手順化した記事として社会学の卒論の進め方2026も参考になる。
FAQ
症例報告に患者の同意は必ず必要ですか?
多くの雑誌・学会で書面同意またはそれに準じる記録の提出が求められる。未成年や意識障害がある患者の場合は代諾者からの同意が必要になるため、執筆前に所属機関の倫理委員会や投稿規定を確認するとよい。
CAREガイドラインは必ず使う必要がありますか?
投稿規定でCAREガイドラインの使用を明記していない雑誌もあるが、多くの医学雑誌が採用または準拠を推奨しているため、構成のたたき台として使うと執筆の抜け漏れを防ぎやすい。
類似症例はどうやって探せばよいですか?
国内文献は医中誌Web、国際文献はPubMedで、診断名・介入名・関連キーワードを組み合わせて検索する。キーワード選定に迷う場合は、医中誌Webの類似文献提示機能を使う方法もある。
バンクーバー方式とAPA方式は何が違いますか?
バンクーバー方式は本文中の引用箇所に登場順の番号を振り、文献リストも番号順に並べる方式で、自然科学系・医学系の雑誌で広く使われる。著者名と刊行年を本文に示すAPA方式とは表記の考え方が異なる。
画像を匿名化するにはどうすればよいですか?
目の部分を隠すだけでは不十分な場合があるため、タトゥーや特徴的な傷跡など個人を特定しうる要素が写っていないか複数人で確認し、必要であれば該当箇所を加工または記載を省く。
投稿先はどう選べばよいですか?
症例の診療科・希少性・教育的価値に近い専門誌を候補にし、CAREガイドラインの採用有無、文字数・図表数の上限、査読期間の目安を投稿規定で比較したうえで選ぶとよい。
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