卒論の表紙の書き方には、全国共通の公的な様式は存在しない。何を書き、どこに置くかを決めているのは、所属する学部・学科が配布する提出要領である。したがってこの記事の役割は二つある。ひとつは、どの学部でもおおむね共通して求められる記載項目と配置を、記入テンプレートの形で示すこと。もうひとつは、正解が書いてある提出要領をどこで手に入れ、そこから何を抜き出せばよいかを示すことである。
要点:表紙の記載項目は「題目・提出先・学科/専攻・学籍番号・氏名・指導教員名・提出年月」がおおむねの標準。ただし最終的な正解は所属学部の提出要領にあり、要領はWebの公開ページではなく学生向けに配布される別文書に置かれていることが多い。表紙と目次にはページ番号を振らないか、本文と別系統にするのが通例で、この切り分けはセクション区切りで行う。
共通の様式はない、という前提
卒業論文の書式は、大学設置基準のような全国一律の規則ではなく、各学部・学科の内規として定められている。同じ大学でも学部が違えば字数も表紙も変わるため、「大学名で検索して出てきた様式」をそのまま使うのは危険である。
さらに実務的に厄介なのは、その内規が公開ページに載っていないことが多い点である。たとえば早稲田大学文学部の卒業論文に関する学生向けページを開くと、卒業論文が必修(8単位)であることと提出期間は公示されている一方、作成・提出にあたっての注意事項は、学内で配布される別の文書へのリンクとして置かれている。つまり、書式の具体はそちらを開かないと分からない。
この構造はどの大学でもおおむね同じである。公開ページで分かるのは締切と単位の扱いまで、書式の具体は配布資料の側にある、と考えて探すのが早い。
表紙に載せる7項目
| 項目 | 書き方 | よくある間違い |
|---|---|---|
| 題目(主題・副題) | 提出した題目届と一字一句同じにする | 途中で変えた題目を表紙にだけ反映している |
| 提出先 | 「〇〇大学〇〇学部」または学科名まで | 学部名を省略して大学名だけ書く |
| 学科・専攻・コース | 要領の表記に合わせる | 通称・略称で書く |
| 学籍番号 | 正式な桁数どおり。ハイフンの有無も要領に従う | 下4桁だけ書く |
| 氏名 | 戸籍上の表記。ふりがなの要否は要領で確認 | 通称名・旧姓で提出してしまう |
| 指導教員名 | 職位の表記(教授・准教授)と敬称の有無を要領で確認 | 敬称を付けるか迷って両方混在させる |
| 提出年月 | 和暦か西暦かを要領に合わせる | 執筆を始めた年を書いてしまう |
このうち事故になりやすいのが題目である。題目届を出した後に内容が変わり、本文の主張と題目がずれたまま提出してしまう例は毎年ある。題目を変更する場合は、表紙を直す前に事務手続きが必要かを確認する。
表紙の記入テンプレート
角括弧を自分の情報に置き換え、角括弧ごと削除して使う。要領に指定がある項目は、必ずそちらを優先する。
| 位置 | 記入内容 |
|---|---|
| 上部 | [年度]年度 卒業論文 |
| 中央上 | [題目] [副題がある場合:——副題——] |
| 中央下 | [大学名][学部名][学科・専攻名] |
| 下部右 | 学籍番号 [番号] 氏名 [氏名] 指導教員 [氏名][職位] |
| 最下部 | [提出年月]提出 |
表紙は1ページに収め、他の要素(要旨や謝辞)を同じページに入れない。要旨を付す場合は表紙の次ページに独立して置く。要旨そのものの書き方は論文の要旨(アブストラクト)の書き方を参照してほしい。
配置とレイアウトの目安

要領に指定がない場合の一般的な目安は次のとおりである。あくまで指定がないときの落としどころであり、指定があればそちらが優先する。
- 題目は本文より数ポイント大きく、太字にするかは要領に従う。装飾的なフォントは使わない
- 題目が2行に渡る場合、意味のまとまりで改行する。助詞の直後で切らない
- 上下左右の余白は本文と同じ設定にそろえる
- 罫線・枠・ロゴ・画像は入れない。大学の指定様式に含まれている場合のみ使う
- 表紙にはページ番号を振らない
用紙・余白・フォントといった文書全体の設定をWord上でどう入れるかは、Wordで卒論の書式を整える手順に操作手順がまとめられている。本記事は「何を書くか」、そちらは「どう設定するか」を扱っている。
目次の作り方
目次は、本文の見出し構造をそのまま写したものである。したがって目次で迷うということは、章立てがまだ固まっていないということでもある。
| 階層 | 載せるか | 備考 |
|---|---|---|
| 章(第1章) | 必ず載せる | — |
| 節(1.1) | 載せる | ここまでが標準 |
| 項(1.1.1) | 任意 | 章が長い論文のみ。全体で統一する |
| 図表目次 | 図表が多ければ別立て | 目次の次ページに置く |
| 参考文献・付録 | 載せる | 章番号は付けないことが多い |
項まで載せるかどうかは、途中で変えず全章で統一する。第1章だけ項まで細かく、第5章は章だけ、という状態は最も目につく不統一である。章立ての組み方そのものは卒論の構成・章立てテンプレートと論文の目次の作り方に詳しい。
前付けと本文のページ番号
表紙・要旨・目次は「前付け」と呼ばれ、本文とはページ番号の扱いを変えるのが通例である。扱い方は大きく三つある。
| 方式 | 内容 | 向く場合 |
|---|---|---|
| 前付けは番号なし | 表紙・要旨・目次にページ番号を振らず、本文の最初を1とする | 前付けが3ページ以内の卒論。最も簡単 |
| 前付けは別系統 | 前付けをローマ数字、本文をアラビア数字にする | 前付けが長い修論・博論 |
| 通し番号 | 表紙を1として最後まで通す | 要領で明示的に指定されている場合のみ |
いずれの方式でも、前付けと本文を別のセクションに分けないとページ番号は連動してしまう。改ページ(Ctrl+Enter)ではセクションは分かれず、セクション区切りを入れる必要がある。この操作はWordで目次を自動作成する手順とWordで卒論の書式を整える手順で扱われている。
そして目次は必ず最後に更新する。本文を1文字でも直せばページ番号は動くため、印刷またはPDF出力の直前に更新をかけ、目次のページ番号と実際のページを1か所ずつ突き合わせる。
提出要領の探し方と、抜き出す6項目

要領は次の順で探すと見つかりやすい。
- 学部・学科が配布する履修の手引き(冊子またはPDF)の卒業論文の項
- 学内ポータルの卒業論文関連のお知らせと、そこに添付された文書
- 学部・学科の学生向けWebページ(提出期間はここに公示されることが多い)
- ゼミ・研究室で共有されている過去の要領および先輩の提出物
- 学科事務室への問い合わせ
要領が見つかったら、読むべきは全体ではなく次の6項目だけである。これを1枚のメモに書き写してから書式設定に入る。
| # | 抜き出す内容 | 書式設定のどこに効くか |
|---|---|---|
| 1 | 用紙サイズと印刷の向き、片面か両面か | ページ設定・綴じ代 |
| 2 | 余白(上下左右のmm) | ページ設定 |
| 3 | 1ページの文字数×行数、または行間 | 文字数と行数 |
| 4 | 本文フォントと級数(和文・欧文それぞれ) | フォント設定 |
| 5 | 表紙の記載項目と、指定様式の有無 | 表紙ページ |
| 6 | ページ番号の位置と、前付けを数えるか | セクション区切り・ページ番号 |
要領にこれらの記載がない項目は、研究室の過去の卒論にそろえるのが実務的な判断である。そのうえで、判断が分かれそうな点だけ指導教員に確認すれば足りる。
学部・学科で分かれやすい点
同じ大学でも学部が違えば変わりやすいのは、次の点である。自分の学部の要領を読むときは、ここを重点的に見る。
- 字数の数え方:本文のみか、図表・注・参考文献を含むか
- 要旨の要否:和文のみか、英文要旨も求めるか
- 参考文献の書式:学科で指定があるか、分野の慣行に委ねられるか
- 提出形態:製本の要否、提出部数、電子提出の有無
- 題目の変更手続き:届出後の変更が可能か、期限はいつか
参考文献の書式に指定がない場合は、分野で一般的な方式に合わせる。日本語の論文で広く使われてきた方式と、心理学・教育学などで用いられるAPA方式の違いは参考文献の書き方(SIST 02・APA対応)に、本文中の引用の作法は論文の引用ルールにまとめてある。製本が必要な場合の費用と納期は卒論・修論の製本サービス比較を参照してほしい。
提出直前に見つかる5つの不備
| 不備 | 原因 | 予防 |
|---|---|---|
| 題目届と表紙の題目が違う | 途中で内容が変わった | 提出2週間前に題目届の控えと突き合わせる |
| 目次のページ番号が古い | 本文修正後に目次を更新していない | PDF出力の直前に必ず更新をかける |
| 本文が1ページ目になっていない | セクションを分けていない | セクション区切りを入れ、前ヘッダーとの連動を切る |
| 指導教員名の敬称が不統一 | 要領を確認していない | 要領の表記をそのまま写す |
| 表紙のフォントだけ違う | 他所からコピーした | 提出前に全選択してフォント欄を確認する |
これらはいずれも内容の評価とは無関係だが、提出物の第一印象を左右する。提出前の総点検の手順は卒論の合格例(章ごとの見本と講評)の末尾チェックリストにまとめてある。
体裁の前に、中身を固めておきたいなら
Tesifyは、質問に答えていくだけで章ごとの草稿を組み立てられる論文執筆ツールです。章立てが固まっていれば目次はそのまま決まり、体裁の作業は最後にまとめられます。文章は100%あなた自身のものとして残ります。
よくある質問
卒論の表紙に決まった全国共通の様式はありますか?
ありません。卒業論文の書式は各学部・学科の内規として定められており、同じ大学でも学部が違えば表紙の記載項目も字数も変わります。インターネットで見つけた他大学の様式をそのまま使うのではなく、所属学部の提出要領を必ず確認してください。
提出要領が見つかりません。どうすればよいですか?
公開されているWebページには提出期間しか載っていないことが多く、書式の具体は学生向けに配布される別文書に置かれているのが一般的です。履修の手引き、学内ポータルのお知らせと添付文書、ゼミで共有されている資料の順に探し、それでも見つからなければ学科事務室に問い合わせてください。
表紙にページ番号は必要ですか?
通常は振りません。表紙・要旨・目次は前付けとして扱い、本文の最初のページを1とするのが最も一般的です。前付けが長い場合はローマ数字で別系統に振る方式もあります。いずれの場合も、前付けと本文をセクションで分けないとページ番号が連動してしまいます。
目次は手で作ってもよいですか?
作れますが、推奨しません。本文を修正するたびにページ番号が動くため、手作業では必ずずれます。見出しスタイルを使って自動生成しておけば、提出直前に更新をかけるだけで整合が取れます。手作業で作る場合は、最終稿のPDFを出してから1項目ずつ突き合わせてください。
副題(サブタイトル)は付けたほうがよいですか?
主題だけで対象と範囲が伝わらない場合に付けます。主題で扱う現象を示し、副題で対象や方法を限定する形が一般的です。ただし題目届に登録した形と一致している必要があるため、後から副題を足す場合は変更手続きの要否を確認してください。
図表目次は必要ですか?
要領に指定がなければ任意です。目安として、図と表を合わせて10点を超えるなら別立てにすると読み手が探しやすくなります。作る場合は目次の次ページに置き、図と表を分けるか一覧にするかを全体で統一してください。
まとめ
卒論の表紙と目次に全国共通の様式はなく、正解は所属学部の提出要領にある。そしてその要領は公開ページではなく、学生向けに配布される文書に置かれていることが多い。まず要領を手に入れ、用紙・余白・文字数と行数・フォント・表紙の記載項目・ページ番号の6項目だけを抜き出す。そのうえで本記事の記入テンプレートに当てはめれば、表紙と目次は迷わずに作れる。作業そのものは1時間もかからないが、題目の不一致と目次の未更新という二つの事故だけは、提出直前に必ず確認しておきたい。
