論文の引用ルール完全ガイド2026|本文中の引用の書き方(直接・間接)
論文を書くとき、先行研究を適切に引用することは研究倫理の基本であり、採点官・審査委員が最初に確認するポイントでもある。しかし「ここで誰かの説を紹介したい」というとき、本文中にどう書けばよいのか—著者名だけ?年号も必要?ページ数はどこに?—という具体的な書式ルールで詰まる学生は多い。このガイドでは、日本の学術論文で主に使われるSIST 02とAPA第7版それぞれの本文中引用ルールを、直接引用・間接引用ごとに体系的に解説する。書式例を多数掲載しているので、論文執筆中の手元リファレンスとして活用してほしい。
なお、参考文献リストの書き方(書誌情報の全記載形式)については、参考文献の書き方完全ガイド|SIST 02・APA対応【2026年版】で詳述しているので、あわせて参照してほしい。本記事は本文中の引用表記に絞って解説する。
引用ルール・3つの基本原則
- 出典を必ず明示する—本文中のすべての引用箇所に著者名・出版年(・ページ数)を記載する。
- 直接引用は原文を忠実に再現する—短文は「」、長文は字下げブロックで本文と区別する。
- 間接引用でも出典は省略しない—自分の言葉に変えても著者名と出版年の記載は必須。
直接引用と間接引用の違い

引用には大きく分けて2種類ある。どちらを使うかを適切に判断することが、引用ルールの出発点だ。
| 種類 | 意味 | ページ数記載 | 適する場面 |
|---|---|---|---|
| 直接引用 | 原文の文言を一字一句そのまま転記する | 必須 | 定義・法律条文・概念名称など、原文の言い回し自体が重要なとき |
| 間接引用(パラフレーズ) | 原文の内容を自分の言葉で言い換えて紹介する | 推奨(省略可) | 内容を要約・統合して論旨に組み込みたいとき |
学術論文では間接引用の比率を高めるのが一般的だ。直接引用はあくまで例外的に使うものであり、多用すると「自分の考えがない」と判断されるリスクがある。直接引用は、原文の言い回しを変えると意味が変わってしまう定義や主張に限定するのが望ましい。
直接引用と間接引用の境界、および引用が剽窃に転落するケースについては、引用と剽窃の違いとは?2026|セーフな引用とアウトな転載を例で線引きで詳しく解説している。
著者名・出版年方式の基本形式
現代の多くの学術誌・大学院で採用されているのが著者名・出版年(author-date)方式だ。SIST 02もAPA第7版もこの方式を基本とし、本文中の引用箇所に「(著者名, 出版年)」という簡略情報を挿入し、論文末の参考文献リストに詳細を掲載する構造になっている。
本文中への著者名の組み込み方には2パターンある。
パターン①:文末引用(括弧内に著者名と年)
〇〇という現象は、ストレス反応と密接に関連している(山田, 2023)。
パターン②:文頭引用(著者名を文の主語に組み込む)
山田(2023)は、〇〇という現象がストレス反応と密接に関連していると述べている。
どちらも正しい形式だ。内容の流れや強調したいポイントに応じて使い分けることで、文章のリズムが改善される。同一段落内で同じ著者を何度も引用する場合は、最初の引用でフルに記載し、以降は年号を省略して「山田は」と続けることができる。
SIST 02の本文中引用ルール
SIST 02(科学技術情報流通技術基準)は、科学技術振興機構(JST)が整備した日本の学術論文向け標準書式であり、2007年改訂版が現在も基準として参照されている。理工系・自然科学系の和文誌を中心に広く採用されており、文系・社会科学系の誌によってはAPAが指定されることもある。
SIST 02:著者名・出版年方式での本文中表記
| 形式 | 書き方の例 |
|---|---|
| 文末引用(括弧内) | 〇〇という傾向が確認されている(佐藤, 2021, p. 45)。 |
| 文頭引用(著者を主語に) | 佐藤(2021)は、〇〇という傾向を報告している(p. 45)。 |
SIST 02:直接引用の書き方
短い直接引用(おおむね3行以内)は、「 」(かぎ括弧)で囲んで本文中に埋め込み、末尾に出典を記す。
(例)佐藤(2021)によれば「研究倫理の遵守は科学的知識の正確な蓄積に不可欠な条件である」(p. 45)と定義されている。
長い直接引用(おおむね4行以上)は、引用ブロックとして字下げ(1〜2文字分)し、前後に空白行を入れて本文と区別する。かぎ括弧は原則使用しない。ページ数は末尾の括弧内に記す。
科学的探究は、仮説の設定から検証、結果の解釈に至る一連のプロセスを通じて、既存の知識体系を批判的に更新していく営みである。個々の研究が先行研究に正確に言及し、引用の根拠を明示することで、知識の蓄積が可能になる。(佐藤, 2021, pp. 45-46)
SIST 02:番号方式(参考)
SIST 02は著者名・出版年方式のほかに番号方式も認めている。本文中の引用箇所に上付き番号(例:1))を振り、論文末に番号順で参考文献リストを記載する形式だ。医学・薬学系の投稿誌では番号方式を指定するケースが多い。投稿先の執筆規程を必ず確認すること。
APA第7版の本文中引用ルール
APA(アメリカ心理学会)スタイルは心理学・教育学・社会科学系の論文で国際的に広く使われており、日本の大学・大学院でも採用が増えている。現行の第7版(2020年刊行)では第6版から一部ルールが変更されているため、古い資料に依存しないよう注意が必要だ。
APA:間接引用(パラフレーズ)の書き方
著者を文末に記す場合(括弧内):
自己効力感は学習の継続に影響を与える重要な要因の一つである(田中, 2022)。
著者を文頭に組み込む場合:
田中(2022)は、自己効力感が学習の継続において重要な役割を果たすことを示した。
APA:直接引用—40語以下の短い引用
40語(日本語では約80〜100字が目安)以下の直接引用は、本文中にダブルクォーテーション(英語文献の場合)またはかぎ括弧(日本語文献の場合)で囲み、著者名・年・ページ数を必ず記載する。
日本語文献の場合:
田中(2022)は「動機づけの持続は、自己効力感の高さと有意な相関を示す」(p. 38)と述べている。
英語文献の場合:
Smith (2020) states that “motivation and self-efficacy are positively correlated” (p. 38).
APA:直接引用—40語以上の長い引用(ブロック引用)
40語以上になる場合は、新しい段落で始め、左端から約1.27cm(0.5インチ)字下げしたブロック引用とする。引用符は使用しない。ページ数は末尾の括弧内に記す。
動機づけの持続は、個人が抱く自己効力感の高さと密接に関連しており、課題遂行の過程で生じる困難に対する反応パターンを大きく規定する。自己効力感が高い学習者は失敗を一時的な障壁と捉え、挑戦を継続する傾向がある。一方、自己効力感が低い学習者は早期に回避行動を示すことが多い。(田中, 2022, p. 38)
SIST 02 vs APA 比較表
| 項目 | APA第7版 | SIST 02(著者年方式) |
|---|---|---|
| 基本形式 | (著者姓, 年) | (著者名, 年) |
| 短い直接引用 | ” “(英語)または「」(日本語)+ p.XX | 「」+ p. XX |
| 長い直接引用 | 40語以上→ブロック引用(左1.27cm字下げ) | 4行以上→字下げブロック |
| ページ数 | 直接:必須 / 間接:推奨 | 直接:必須 / 間接:推奨 |
| 3名以上の著者 | 初回から et al.(第7版より変更) | 第一著者ら |
| 主な採用分野 | 心理・教育・社会科学(国際) | 理工・自然科学(日本) |
| 番号方式 | 非採用 | 著者年方式と並行して採用可 |
著者数・言語別の書き方
著者数によって変わる記載形式
著者の人数によって本文中の記載が変わる。以下の規則はAPA第7版に基づくが、SIST 02も同等の扱いが原則だ。
| 著者数 | 本文中の書き方(例) |
|---|---|
| 1名 | (山田, 2023) |
| 2名 | (山田・田中, 2023) / (Yamada & Tanaka, 2023) |
| 3名以上 | (山田ら, 2023) / (Yamada et al., 2023) |
| 組織・団体 | (文部科学省, 2024) ※略称が一般的な場合は2回目以降(文科省, 2024) |
APAでは第7版から3名以上の著者を初回から「第一著者 et al.」で記載する形式に変更された(第6版では初回のみ全員記載だった)。SIST 02も3名以上の場合は「第一著者ら」と表記する。古い資料を参照すると誤った形式を踏襲してしまうため注意が必要だ。
日本語文献と英語文献の混在
日本語文献を引用する場合は日本語の著者名・年の形式(山田, 2023)、英語文献を引用する場合は欧文の姓・年の形式(Smith, 2023)とする。同一括弧内に複数の文献を併記するときは、APA方式ではセミコロンで区切り、年代の古い順に並べる。
〇〇の影響については複数の研究で報告されている(Smith, 2019; Jones, 2021; 山田, 2023)。
ページ数の記載ルール
ページ数の記載は、引用の信頼性と検証可能性を担保する重要な要素だ。以下の書き方を押さえておきたい。
- 単一ページ:p. 45(「p.」の後に半角スペースを入れるのが正式)
- 複数ページ(連続):pp. 45–47(ダッシュまたはハイフンで範囲を示す)
- 複数ページ(飛び地):pp. 45, 48
- 章・節で参照する場合:(著者名, 年, 第3章)も許容される
- ウェブページに段落番号がある場合:(著者名, 年, para. 3)
- 電子書籍でページ番号が可変の場合:章名や節番号で代替する
ウェブサイトや電子書籍でページ番号が存在しない場合の詳しい対処法については、ウェブサイトの参考文献の書き方2026|SIST 02・APA別の記載例とURL・閲覧日を参照してほしい。
よくある間違い5選と対処法

間違い①:間接引用でページ数を省略する
「自分の言葉で書き直したのでページ数は不要」と思いがちだが、間接引用でも引用元のページを記載することで検証可能性が格段に上がる。特に書籍を引用する場合はページ数の明記を習慣づけたい。
間違い②:同じ文献を論文内で異なる形式で記載する
「山田(2023)」と「(山田, 2023)」が同一論文内で混在するケースがある。括弧の有無・カンマの位置・年号の記載方法は論文全体で一貫させなければならない。提出前に全引用箇所を一括検索して統一確認することを勧める。
間違い③:直接引用の分量が過大になる
学術論文は「自分の考え」を展開することが核心だ。直接引用が多すぎると、オリジナリティが低いと評価される。長い直接引用は原文の言い回し自体が論拠となる場合のみに絞り、それ以外は間接引用(パラフレーズ)に切り替えること。
間違い④:二次引用(孫引き)を一次文献として記載する
AやBという論文の中で紹介されたCの研究を、Cを直接読まずに引用することを「二次引用(孫引き)」という。やむを得ない場合は「Aは、Cを引用して〇〇と述べている(A著者, 年, C著者を引用)」と明記し、参考文献リストにはAのみを記載する。可能な限り一次資料にあたることが原則だ。
間違い⑤:直接引用で原文を部分的に改変してしまう
「」で囲みながら、一部を自分の言葉で書き換えてしまうケースがある。直接引用では原文を一字一句変えてはならない。語句を省略する場合は省略符(……)を使い、補足が必要な場合は〔 〕(角括弧)内に補足語を入れる。改変が必要なら間接引用に切り替えること。
引用と剽窃の境界をより深く理解したい場合は、引用と剽窃の違いとは?2026|セーフな引用とアウトな転載を例で線引きもあわせて読んでほしい。また、文献の内容を要約して論文に組み込む正しい手順については、論文の要約(抄録・文献要約)の書き方2026で詳しく解説している。
よくある質問(FAQ)
Q. 間接引用にはページ数を書かなくてもよいですか?
書かなくても規則違反にはなりませんが、書籍を引用する場合は特に記載を強く推奨します。ページ数があることで読者が原文を確認しやすくなり、論文の信頼性が上がります。APA第7版でも間接引用へのページ数付与を「奨励(encouraged)」と明記しています。
Q. 日本語の直接引用にダブルクォーテーション(” “)を使ってもよいですか?
日本語文献を直接引用する際は「 」(かぎ括弧)を使うのが一般的です。ダブルクォーテーションは英語文献の直接引用や英語論文での使用に適しています。論文内で日英が混在する場合は、言語に応じて使い分けてください。
Q. 同じ文献を同一段落内で複数回引用する場合、毎回著者名と年を書く必要がありますか?
APA第7版では、同一段落内で同じ著者の同一著作を繰り返し引用する場合、2回目以降は年号を省略できます(例:山田(2023)は…。山田はさらに…とも述べている)。ただし段落が変わったら再度(著者名, 年)を記します。SIST 02も同様の扱いが通例です。
Q. SIST 02とAPAのどちらを使えばよいですか?
指導教員・投稿先の学術誌の規定に従うのが原則です。一般的に、理工・自然科学系の和文誌ではSIST 02、心理・教育・社会科学系や英語論文ではAPAが多く使われます。大学のレポート・卒業論文では担当教員の指示を最優先にしてください。どちらとも指定がない場合は、対象分野で主流のスタイルを選び、論文全体で統一します。
Q. ウェブサイトを引用するときページ数がない場合はどう書きますか?
ウェブページには一般的にページ番号がありません。APAでは段落番号(para. 1)や見出し名を代わりに使用します。ページ番号が存在しない場合は年号のみ記載し、参考文献リストでURLと閲覧日を明記します。SIST 02についても同様の対処が認められています。
Q. 著者不明の文献を引用するときはどう書きますか?
著者が明記されていない場合は、著者名の代わりに資料名(書名・記事名など)の冒頭数語を括弧内に記します。例:(「学術情報の流通について」, 2022)。可能であれば著者名が判明している資料を優先して選ぶことが望ましいです。
英語論文でHarvard形式の著者年方式を確認したい方へ
英語圏で広く使われるHarvard形式の本文中引用の詳細ルールは、Harvard Referencing Guide 2026 完全版(英語版ガイド)にまとめられている。APAとの違いや英国・オーストラリア式のバリエーションも解説している。
引用書式の記載漏れ・表記ゆれをAIでチェック—Tesify
Tesifyは論文の構成・下書き支援に加え、APA・SIST 02形式の引用書式が正しく記載されているかをAIが確認する機能を備えている。著者名の表記ゆれ・ページ数の記載漏れ・参考文献リストとの不整合を自動でフラグアップするので、提出前の最終チェックに活用してほしい。独自性の自己チェック機能もあわせて使うことで、引用ルールの遵守と研究倫理の両方を一度に確認できる。
