日本の女性研究者の割合 最新データ2026|分野別・国際比較で見る現状と推移
全研究者に占める女性の割合が18.3%——総務省「科学技術研究調査」(令和5年/2023年)が示すこの数字は、日本の科学技術政策が長年向き合ってきた構造的課題を端的に表している。科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学技術指標2024」によれば、女性研究者数は前年比4.5%増と着実に増加しているものの、OECD(経済協力開発機構)加盟国・地域の中で日本の割合はほぼ最下位圏に位置する。
課題はキャリア中盤にとどまらない。大学学部段階でも、理学系の女性割合は27.9%、工学系では16.1%にとどまる(文部科学省「令和5年度学校基本調査」)。研究者になる以前の「入口」においてすでに格差は顕在化しており、パイプライン全体にわたる検討が求められている。本稿では、最新の公的統計をもとに、分野別・部門別・国際比較・推移・要因・政策目標の順にデータを整理する。
- 女性研究者 割合:18.3%(2023年、総務省科学技術研究調査)— OECD最下位圏
- 部門別:大学等28.9%、企業12.2%(NISTEP科学技術指標2024)
- 分野別:保健(薬学・看護等)は50%超、工学系は約10〜12%と二極化
- 英国46.1%・フランス41.9%・ドイツ41.4%と比べ、大学等でも約10〜18ポイントの開き
- 推移:2004年11.6% → 2020年16.9% → 2023年18.3%と緩やかに上昇
日本の女性研究者割合 最新数値(2023年)
総務省「科学技術研究調査」(令和5年/2023年)によると、日本の全研究者に占める女性の割合は18.3%で、女性研究者の実数は約183,000人にのぼる。前年比では女性研究者数全体で4.5%増、うち博士号を持つ女性研究者は3.9%増と、絶対数は一貫して拡大している(NISTEP「科学技術指標2024」)。
ただし「増加している」という事実と「依然として低い」という評価は両立する。NISTEP「科学技術指標2024」(調査資料-341)は、日本の女性研究者割合が調査対象国・地域の中で最も小さいことを明示している。量的な拡大が続く一方で、比率の改善は主要国に追いつくには遠く及ばない速度にとどまっている。
部門別に見る女性研究者の割合
女性研究者の割合は、大学・企業・公的機関という「部門」によって大きく異なる。大学等での割合が相対的に高い背景には、女性教員比率目標の設定や多様性推進プログラムが企業に比べて先行して整備されてきたことがある。
| 部門 | 女性研究者割合 | 出典・調査年 |
|---|---|---|
| 大学等 | 28.9% | NISTEP 科学技術指標2024(令和5年/2023年データ) |
| 企業 | 12.2% | NISTEP 科学技術指標2024(令和5年/2023年データ) |
| 全部門合計 | 18.3% | 総務省 科学技術研究調査(令和5年) |
大学等が28.9%であるのに対して企業が12.2%と、差は約16ポイントある。企業の研究開発部門では特に製造業・情報通信業における女性エンジニア・研究者の少なさが全体値を押し下げている。この部門間格差は、日本特有の産業構造と採用慣行を反映している。
分野別にみる女性研究者割合
大学等の研究者を専門分野別に見ると、保健系(薬学・看護学・医学の一部)と理工学系の間に著しい差がある。以下のデータは内閣府男女共同参画白書・総務省科学技術研究調査をもとにした2020〜2021年度の概算値であり、最近の採用割合はやや改善傾向にあるが、分野間の序列はほぼ不変である。
| 分野 | 女性研究者割合(概算) | 特記事項 |
|---|---|---|
| 保健(薬学・看護等) | 50%超 | 唯一女性が半数以上を占める分野 |
| 人文科学 | 約41% | 文学・哲学・言語学等 |
| 社会科学 | 約29% | 経済・法・社会学等 |
| 農学 | 約21% | 農学・林学・水産学等 |
| 理学 | 約14〜15% | 数学・物理・化学・生物等 |
| 工学 | 約10〜12% | 機械・電気・情報等。全分野中最低水準 |

採用段階の数値では若干の改善が見られる。内閣府「第5次男女共同参画基本計画」の成果目標関連データ(2022年度実績)によると、大学等における工学分野の女性採用割合は16.5%、理学分野は19.6%と、全体の在籍者(ストック)割合に比べ新規採用での改善が進んでいる。とはいえ理工系の水準が依然として低いことは変わらない。
20年間の推移 — 上昇傾向でも速度は緩やか
女性研究者割合は過去20年で着実に上昇してきた。ただしその増加ペースを丁寧に追うと、年率0.3〜0.4ポイント程度の緩やかな改善にとどまっており、欧米との格差が縮まる速度は限定的だ。
| 年 | 女性研究者割合 | 出典 |
|---|---|---|
| 2004年(平成16年) | 11.6% | 内閣府 平成17年版男女共同参画白書 |
| 2020年(令和2年) | 16.9% | 総務省 科学技術研究調査(令和2年) |
| 2023年(令和5年) | 18.3% | 総務省 科学技術研究調査(令和5年) |

2004年から2023年の19年間で11.6%から18.3%へ約6.7ポイントの上昇だ。同期間の大学院進学率や大学学部への女性入学者数の変化とも連動しており、パイプライン上流の拡大が割合向上に寄与している。大学院進学率の最新データ(学部別・国際比較)と合わせて見ると、学術キャリア全体での女性の動向がより立体的に把握できる。
国際比較 — OECDの中の日本の位置
NISTEP「科学技術指標2024」(調査資料-341)は、大学等における女性研究者割合の国際比較データを掲載している。各国の調査年次が2017〜2023年と異なるため厳密な同年比較ではないが、規模感の差は明確だ。
| 国 | 大学等の女性研究者割合 | 備考 |
|---|---|---|
| 英国 | 46.1% | 参照年次はNISTEP指標による |
| フランス | 41.9% | |
| ドイツ | 41.4% | |
| 韓国 | 35.2% | |
| 日本 | 28.9% | 令和5年/2023年データ(NISTEP) |

大学等に限定した比較でも日本の28.9%は韓国の35.2%より6ポイント低く、英国の46.1%と比べると17ポイント以上の開きがある。さらに全部門合計では日本の値は18.3%まで下がるため、企業部門を含む実態の差は一層大きい。
なお内閣府男女共同参画局の資料では、全部門合計での国際比較(OECD参照値)において日本の女性研究者割合が加盟国・地域の中で最低水準であったと指摘されている。日本は研究者の絶対数ではドイツ・英国に次ぐ規模を持ちながら、女性比率では著しく低い位置にある。
STEMの入口から見るジェンダーギャップ
女性研究者の少なさは就職段階ではなく、大学学部への入学段階から始まっている。文部科学省「令和5年度学校基本調査」によると、大学学部生に占める女性の割合は次のとおりだ。
- 理学系:27.9%(学部生の約4人に1人強)
- 工学系:16.1%(学部生の約6人に1人)
この「入口の偏り」が修士・博士課程→研究職というパイプラインにそのまま引き継がれることで、研究者全体の女性割合が低く抑えられると専門家は指摘する。大学院進学率の学部別データと合わせて見ると、特に理工系女性の博士課程への進学パターンが重要な分岐点になっていることがわかる。
格差の背景と構造的要因
なぜ日本の女性研究者割合は国際比較で低い水準にとどまるのか。研究者育成の各段階に複数の構造的障壁が存在する。
1. 任期付きポストの集中
日本の大学等では特任研究員・特別研究員等の任期付きポストの比率が高い。NISTEP「科学技術指標2024」は大学等において任期付き研究者の割合が女性のほうが高い傾向にあることを指摘しており、雇用の不安定さがキャリア継続の障壁となりやすい。
2. 出産・育児との両立環境
博士課程在籍中や博士取得直後の30代前半は、出産・育児期と研究キャリアの上昇期が重なりやすい。欧州主要国では育児休業後の復帰制度や保育環境の整備が進んでいるが、日本ではその整備が研究職に十分に届いていない側面がある。
3. ロールモデル不在の連鎖
理工系上位職・管理職に女性が少ないことで、学生が「研究者になる自分」をイメージしにくい状況が生まれやすい。この意識形成の問題は、学部選択の段階から修了後の進路選択まで一貫して影響を及ぼす。大学中退率データが示す離脱動向と照らし合わせると、支援環境の整備が在籍維持に直結することがわかる。
政策目標と現在の取り組み
内閣府は「第5次男女共同参画基本計画」において、2025年度末までの自然科学系女性研究者採用割合の目標値を設定している。これらは「大学等における新規採用割合」の目標であり、在籍者割合(ストック)とは異なる点に注意が必要だ。
| 分野 | 採用割合目標(2025年度末) | 2022年度採用実績 |
|---|---|---|
| 理学系 | 20% | 19.6% |
| 工学系 | 15% | 16.5% |
| 農学系 | 30% | — |
| 医学・歯学・薬学系 | 30% | — |
| 人文科学系 | 45% | — |
| 社会科学系 | 30% | — |
出典:内閣府「第5次男女共同参画基本計画」成果目標、及び同計画の進捗評価資料。工学系と理学系については2022年度採用実績が目標値に近づいていることが確認されており、新規採用段階での改善は進みつつある。
制度面では、文部科学省委託の「女性研究者研究活動支援事業」が各大学において実施されており、育児支援・研究費補助・メンタリングプログラム等が含まれる。また日本学術振興会の各種研究助成においても、多様性確保の観点から女性研究者の応募促進が図られている。
研究者を目指す方への支援制度
博士課程進学や若手研究者としてのキャリアを検討する際、奨学金・フェローシップの活用は経済的基盤を確保するうえで重要だ。日本学術振興会の特別研究員(DC1・DC2)は博士課程在籍者向けの代表的フェローシップで、採択されれば月額研究奨励費を受給しながら研究に専念できる。近年は採択者に占める女性の割合が上昇傾向にあり、女性研究者にとっても活用しやすい制度となっている。
論文執筆・データ整理・文献管理にかかる時間を効率化するためにAIツールを取り入れる研究者も増えており、学術分野でのAI活用の実態は調査でも明らかになっている。Tesifyは論文の構成整理・文章フィードバック・要約補助をサポートするアカデミック向けAIツールで、研究の本質的な思考に集中するための時間を生み出す一手段となっている。
よくある質問(FAQ)
日本の女性研究者の割合は何%ですか?
総務省「科学技術研究調査」(令和5年/2023年)によると、全研究者に占める女性の割合は18.3%です。部門別では大学等が28.9%、企業が12.2%です。NISTEP「科学技術指標2024」は、この数値が調査対象国・地域の中で最も小さいと指摘しています。
女性研究者が最も多い分野と少ない分野は?
最も多いのは保健系(薬学・看護学等)で女性が50%以上を占め、唯一の「女性多数」分野です。次いで人文科学系が約41%。最も少ないのは工学系で約10〜12%です(内閣府男女共同参画白書等の2020〜2021年度概算値)。
他の国と比べて日本の女性研究者割合はどの程度低いですか?
NISTEP「科学技術指標2024」によると、大学等における女性研究者割合は英国46.1%・フランス41.9%・ドイツ41.4%・韓国35.2%に対して、日本は28.9%です(各国調査年次は異なります)。全部門合計では日本18.3%となり、格差はさらに大きくなります。
女性研究者の割合はどのように推移してきましたか?
ほぼ一貫して増加しています。内閣府平成17年版男女共同参画白書では2004年が11.6%、総務省科学技術研究調査では2020年が16.9%、2023年が18.3%です。19年間で約6.7ポイント上昇しましたが、年率換算では0.3〜0.4ポイント程度の緩やかな改善です。
なぜ日本の工学系に女性研究者が少ないのですか?
複数の要因が重なっています。まず学部段階で工学系の女性入学者が16.1%(令和5年度、文科省学校基本調査)と少なく、パイプラインの入口が細い。加えて任期付き雇用が多くキャリアが不安定なこと、女性のロールモデルが上位職に少なく進路選択への影響が生じることが挙げられます。
女性研究者向けの支援制度にはどのようなものがありますか?
主な制度として、日本学術振興会の特別研究員(DC1・DC2)制度(月額研究奨励費の給付)、文部科学省委託の「女性研究者研究活動支援事業」(各大学が実施する育児支援・研究費補助・メンタリング等)があります。各大学独自の「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」支援プログラムも利用可能です。
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