学習指導案とは、その1時間の授業で児童生徒に何ができるようになってほしいかを定め、そこに至る手立てと評価の方法を事前に文書化したものです。実習生の指導案が通らない最大の原因は、本時の目標と評価規準が対応していないことにあります。

ステップ1:単元の中で本時がどこに位置するかを決める
最初にやるべきは本時の内容を考えることではなく、単元全体の何時間目なのかを確定することです。単元指導計画の中で本時が第3時なら、第2時までに何が済んでいるかが本時の出発点になります。ここが曖昧なまま活動を考えると、児童生徒がまだ知らない前提の上に授業を組んでしまいます。
指導教諭に確認しておく項目は次の3点です。
- 単元名と単元の目標、単元全体の時数
- 本時が第何時にあたるか、前時までの到達状況
- 使用する教科書の該当ページと、学校で使っている指導案の様式
様式は必ず配属校のものを使ってください。指導案の書式は学校・自治体・教科によって異なり、全国共通のテンプレートは存在しません。
ステップ2:本時の目標を「児童生徒を主語」にして書く
実習生が最も多く赤を入れられるのがここです。目標を教師の行動で書いてしまう例が非常に多くあります。
| 評価 | 本時の目標の書き方 |
|---|---|
| ✗ 通らない | 分数のたし算について説明する(教師が主語) |
| ✗ 通らない | 分数のたし算に興味をもたせる(達成を確認できない) |
| ✓ 通る | 異分母分数のたし算で、通分してから計算する手順を説明できる |
| ✓ 通る | 2つの解き方を比べ、どちらが簡潔かを理由を挙げて述べることができる |
通る書き方に共通するのは、授業の終わりに達成されたかどうかを外から確認できるという点です。「興味をもたせる」は観察できませんが、「理由を挙げて述べる」は観察できます。目標を書いたら、「授業の最後にこれをどう確かめるか」を自分に問い返してください。答えられないなら、その目標はまだ目標になっていません。
ステップ3:評価規準を目標と一対一で対応させる
目標が定まれば、評価規準はその裏返しとして書けます。指導案が「通らない」と言われる典型は、目標に書いていないことを評価しようとしているケースです。
評価は、児童生徒の学習状況を複数の観点から捉える枠組みで行われます。どの観点をどう表記するかは学習指導要領および配属校・自治体の様式に従ってください。実習生が独自の観点名を作ることはありません。
実務上のチェックは単純です。
- 本時の目標を1文ずつに分解する
- それぞれに対応する評価規準を1つずつ書く
- 対応のない評価規準、評価規準のない目標が残っていないか確認する
- 各評価規準について「何を見て判断するか」(発言・記述・行動)を決める
4番目まで書けていると、授業中に何を見ればよいかが自分で分かるため、実習生でも授業が安定します。

ステップ4:展開を「導入・展開・まとめ」で時間配分する
本時の展開は、時間・学習活動・指導上の留意点・評価を並べた表で書くのが一般的です。50分授業なら、導入5〜10分、展開30〜35分、まとめ5〜10分が目安になります。
実習生の指導案でほぼ必ず起きるのが時間の見積もり過小です。次の3点を織り込んでおくと崩れにくくなります。
- 配付・回収に各1〜2分を計上する。ワークシートを配るだけで学級全体では想像以上に時間を使います。
- 指示は1文1動作で書く。「教科書を開いて、63ページの問題を解いて、終わったら隣と確認して」は3動作です。指導案の段階で区切っておくと、当日の指示も自然に区切れます。
- 削る場所を事前に決めておく。遅れたときにどの活動を落とすかを指導案の余白にメモしておきます。まとめを削ると本時の目標が達成できないため、削るのは展開の練習問題部分にするのが定石です。
ステップ5:指導上の留意点に「予想される反応」を書く
指導案の質が最も表れるのがこの欄です。活動を書くだけでは計画ですが、児童生徒がどう反応しそうかを予測して手立てを用意すると、指導案になります。
書き方の型は「予想される反応 → それに対する手立て」です。
- 「通分せずに分母同士を足す誤答が予想される → 面積図で1/2+1/3が5/6になることを確認させる」
- 「早く終わった児童が生じる → 発展問題を用意し、根拠の説明を書かせる」
- 「意見が出ない → まず隣同士で1分話させてから全体に戻す」
とくにつまずきの予測は、指導教諭が最も見る箇所です。ここが書けていると「教材研究をしている」と評価されます。逆にここが空欄に近いと、授業が想定外の反応で止まります。
ステップ6:提出前に第三者の目で読み返す
提出は研究授業の数日前が目安ですが、配属校の指示が最優先です。指導教諭が朱を入れる時間を確保する必要があるため、前日提出は避けてください。
提出前のチェックリストです。
- 本時の目標が児童生徒を主語にした達成確認可能な文になっているか
- 目標と評価規準が一対一で対応しているか
- 時間配分の合計が授業時間を超えていないか
- 予想される反応と手立てが対になっているか
- 板書計画が展開と矛盾していないか
- 教科書のページ・単元名・学年学級の表記が正確か
- 文体が統一されているか(常体・敬体を混在させない)
文体の統一については 論文の文体ルール2026 の考え方がそのまま使えます。実習全体の記録をまとめる段階に進んだら 実習報告書の書き方2026 を参照してください。指導案は「事前の計画」、実習報告書は「事後の振り返り」で、求められる文書がまったく異なります。
実習後に授業そのものを研究対象にする場合は 教育学の研究方法2026 の授業研究の項が、レポート全般の型は 大学レポートの書き方2026 が参考になります。
よくある質問
学習指導案の様式に全国共通のテンプレートはありますか?
ありません。書式は学校・自治体・教科によって異なります。必ず配属校で使われている様式を指導教諭から受け取り、それに従ってください。市販の書籍やインターネット上の例は構成を理解する参考にとどめるべきです。
本時の目標はいくつ書けばよいですか?
1時間の授業であれば1〜2文が目安です。目標を増やすほど、それぞれに対応する評価規準と確認の手立てが必要になり、45〜50分では扱いきれなくなります。絞るほど授業は安定します。
指導案どおりに授業が進まなかった場合はどうなりますか?
計画どおりに進まないこと自体は問題視されません。重要なのは、遅れたときにどこを削るかを事前に決めてあるかどうかです。まとめの時間を確保できるよう、展開の練習問題などを調整弁として用意しておいてください。
指導案はいつまでに提出すればよいですか?
配属校の指示が最優先です。一般には研究授業の数日前までに提出し、指導教諭の指導を受けてから修正します。前日提出は指導を受ける時間が取れないため避けてください。
板書計画は必ず必要ですか?
様式に欄がある場合は必要です。欄がなくても、展開に書いた学習活動と板書の内容が食い違わないよう、手元で作っておくと授業が安定します。
予想される児童生徒の反応が思いつきません。どうすればよいですか?
教科書の指導書に典型的なつまずきが載っていることが多いため、まず確認してください。あわせて、自分がその単元を学んだときにどこで分からなくなったかを書き出すと具体化しやすくなります。指導教諭に「この場面で子どもはどう反応しますか」と直接尋ねるのが最も確実です。
