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捏造・改ざん・盗用(FFP)とは?2026|研究不正の3類型と学生が陥りやすい境界事例

捏造・改ざん・盗用(FFP)とは?2026|研究不正の3類型と学生が陥りやすい境界事例

修士論文の最終審査で「データの一部が捏造・改ざん・盗用にあたる可能性がある」と指摘され、何年もの研究が白紙になったケースは、国内外で繰り返し報告されている。深刻なのは、意図的な不正だけでなく、ガイドラインへの理解不足から知らぬうちに踏み込んでしまうグレーゾーンが存在する点だ。

捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の頭文字をとった「FFP」は、研究倫理における最も重大な特定不正行為として世界共通の定義を持つ。文部科学省が2014年8月に定めた「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(以下、文科省ガイドライン)も、FFP 3類型を特定不正行為として明確に位置づけている。

この記事では、FFP 3類型の正確な定義・具体例・学生が陥りやすい7つの境界事例を整理し、誠実な研究行為を守るための実践知識を提供する。検出回避の方法ではなく、正しい理解と予防が目的だ。

FFP 3類型 — 早わかり

捏造(Fabrication)は存在しないデータ・結果の作成、改ざん(Falsification)はデータ・画像・過程の不正な加工・変更、盗用(Plagiarism)は他者のアイデア・文章・データの無断流用。いずれも「特定不正行為」として最も厳しく扱われる研究倫理違反であり、発覚時には学位取消・論文撤回などの重大な処分が科される。

FFPとは — 特定不正行為の3類型

研究不正行為には、研究費の不正使用や二重投稿など幅広い類型があるが、そのなかで最も厳しく扱われるのが「特定不正行為」だ。日本では文科省ガイドラインがFFP 3類型を特定不正行為として定義しており、国際的な研究倫理の枠組みでも同様に位置づけられている。

略称 日本語 英語 概要
F 捏造 Fabrication 存在しないデータ・結果を作り上げる
F 改ざん Falsification データ・画像・過程を不正に加工・変更する
P 盗用 Plagiarism 他者の成果・アイデアを無断で流用する

FFPは国際的な研究倫理の枠組みにおいても最重大な違反として位置づけられる。大学・研究機関は不正調査の義務を負い、発覚した場合には所属機関・学術誌・研究助成機関への報告が求められる。研究倫理の全体的な概念については、研究倫理とは?2026|学術的誠実性の原則と学生が守るべき実践で詳しく解説している。

捏造(Fabrication)— 定義・具体例・判断基準

定義

文科省ガイドラインにおける捏造の定義は「存在しないデータ、研究結果等を作り上げること」である。実験を行っていないのに実験結果を記載する、アンケートを実施していないのに回答データを作成するといった行為が典型例にあたる。

具体例

  • 実際には実施していない実験の数値データを作成し、論文に記載する
  • サンプル数が不足している調査で、架空の被験者データを追加する
  • 測定が困難な場面で「おそらくこうなるはず」という推測値を実測値として記録する
  • 存在しない先行研究を参考文献リストに掲載する

判断基準のポイント

「作り上げた」かどうかは、実験ノート・録音記録・生データとの整合性で確認される。研究プロセスの透明な記録がなければ、意図の有無にかかわらず「捏造の疑い」が生じる。データ取得前から実験記録を丁寧に整備しておくことが、最大の防御策となる。

改ざん(Falsification)— 定義・具体例・判断基準

定義

改ざんの定義は「研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」(文科省ガイドライン)。すでに存在するデータや画像を不正に操作する点で、捏造(ゼロからの作成)とは区別される。

具体例

  • 電気泳動画像のバンドを切り貼りして「別の実験結果」として提示する
  • グラフの縦軸範囲を操作し、差異が大きく見えるよう視覚的に誇張する
  • 統計処理で外れ値を正当な理由なく削除し、有意な結果に見せかける
  • 顕微鏡写真のコントラスト・輝度を過剰調整し、見えていない構造を目立たせる

判断基準のポイント

画像処理については、科学的な情報を変えない範囲での均一な調整(全体の明るさ・コントラストの一括変更)は許容される一方、部分的な切り貼り・削除・挿入は改ざんとみなされる。加工前のオリジナルデータを必ず保存しておくことが要件であり、多くの学術誌はRAWデータの保存と提出を義務づけている。

研究不正の捏造(Fabrication)と改ざん(Falsification)を示すイラスト:データの作成・加工・操作を視覚化(文科省ガイドライン FFP 3類型)
捏造(Fabrication)と改ざん(Falsification):データの作成・操作という研究不正の2類型。文科省ガイドライン「特定不正行為」の定義に基づく

盗用(Plagiarism)— 定義・具体例・判断基準

定義

盗用とは「他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること」(文科省ガイドライン)。文章の丸コピーにとどまらず、アイデアや方法論の無断使用も盗用にあたる点を理解しておく必要がある。

具体例

  • 他者の論文の一節をそのままコピーし、引用符・出典表示なしに自分の論文に掲載する
  • 先行研究の独自のアイデアや理論的枠組みを、出典を示さずに自分のものとして記述する
  • 他者が収集したデータを無断で使用し、独自に収集したかのように記載する
  • 翻訳した文章を引用元を示さずに掲載する(翻訳盗用)

正しい引用との違い

適切な出典表示と引用符があれば、他者の文章を参照すること自体は問題ない。引用と盗用の線引きについては、引用と剽窃の違いとは?2026|セーフな引用とアウトな転載を例で線引きで具体例とともに詳しく解説している。

研究不正の盗用(Plagiarism)を示すイラスト:他者の論文からの無断引用・出典未表示の引き写しを視覚化(文科省ガイドライン FFP 3類型)
盗用(Plagiarism):他者のアイデア・文章・データの無断流用。FFP 3類型の「P」に相当する研究不正(文科省ガイドライン「特定不正行為」より)

文部科学省ガイドラインとFFP

文部科学省は2014年8月26日、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」を文部科学大臣決定として策定した。このガイドラインは、大学・国立研究開発法人をはじめとする研究機関に対して以下を求めている。

  • 研究倫理教育の実施:研究者・学生を対象とした研究倫理プログラムの整備
  • 不正調査体制の整備:告発窓口・調査委員会の設置
  • 研究データの保存・管理:生データ・実験記録の適切な保存と管理
  • 不正発覚時の対応:所管機関・学術誌・助成機関への報告義務

大学院生・学部生も「研究者」として本ガイドラインの適用対象となる。不正行為が発覚した場合、個人の処分(学位取消・退学など)にとどまらず、所属機関への研究費削減措置が講じられることもある。ガイドラインの全文と最新情報は文部科学省の研究不正対応ページから参照できる。

ポイント: 文科省ガイドラインにおけるFFPの定義は、文部科学省・研究活動の不正行為等の定義のページでも確認できる。大学の規程は同ガイドラインを準用していることが多く、所属機関の規程と合わせて把握しておくことが重要だ。

学生が陥りやすいグレーゾーン — 7つの境界事例

特定不正行為の定義は明確でも、実際の研究現場では「これはOKか?」と迷う境界事例が存在する。以下に学生が特に注意すべき7つのグレーゾーンを整理する。

1. データの選択的提示(Selective Reporting)

仮説を支持する結果だけを掲載し、支持しない結果を省略する行為。データを捏造したわけではないが、読者・審査者を誤導する点で「改ざんに準じる行為」として問題視される。全データの取得・保存・報告が原則であり、外れ値を除外する場合は除外基準を事前に明示することが求められる。

2. 画像の過剰加工(Inappropriate Image Processing)

蛍光顕微鏡写真やゲル電気泳動画像の特定部分の消去・追加・コントラスト操作。全体に均一に適用する明るさ調整は許容されるが、特定バンドのみの強調・削除は改ざんにあたる。学術誌の多くは画像処理ポリシーを公開しており、投稿前の確認が必須だ。

3. 自己盗用(Self-Plagiarism)

自分が過去に書いたレポート・論文の文章を、出典表示なしに新しい論文で再使用する行為。「自分の文章だから問題ない」という誤解が多いが、学術的誠実性の観点から問題がある。過去の自分の著作物を使用する場合も、正式に引用・出典を示す必要がある。

4. サラミスライシング(Salami Slicing)

1つの研究成果を分割し、複数の論文として発表する行為。各論文が部分的に独立しているように見えても、重複部分の記載が不十分であれば二重出版・自己盗用の問題が生じる。分割発表の場合は、関連論文を明記するとともに編集委員会への事前相談が必要だ。

5. パラフレーズが不十分な「ほぼコピー」

単語や語順をわずかに変えただけで、アイデアや文章構造が元の文と実質的に同一な文章を書く行為。引用符がなく出典が正確でない場合、盗用とみなされる。適切なパラフレーズは文章の言い換えにとどまらず、アイデアの再構成と出典表示を伴う。

6. AI生成コンテンツの無申告使用

生成AIが出力した文章をそのまま自分の論文に使用し、AI使用を開示しない行為。多くの大学が「AI使用ポリシー」を設けており、未申告使用は規定違反となる場合がある。AI出力は使用目的・ツール名・人間による修正の範囲とともに開示することが求められる。開示の書き方については論文でのAI利用を正しく明記する方法2026を参照してほしい。

7. 連鎖引用(Second-hand Citing)

原著論文にアクセスせず、二次文献(レビュー論文など)から情報を引用しているにもかかわらず、原著を直接参照したかのように記載する行為。原著にアクセスできない場合は「〇〇(2023)によれば……(△△, 2019より引用)」のように二次引用であることを明示する必要がある。

なぜFFPは重大なのか

FFPが厳しく扱われる根本的な理由は、研究に対する社会的信頼の根幹を揺るがすからだ。

個人への影響

  • 学位・資格の取消し
  • 論文撤回(Retraction)による研究キャリアへの長期的ダメージ
  • 所属大学・機関からの懲戒処分・退学
  • 研究費返還要求・悪質な場合の刑事責任

学術界・社会への影響

  • 虚偽データに基づく後続研究の連鎖的な誤り
  • 医療・工学・政策分野では、不正なデータが実害を及ぼす可能性がある
  • 科学全体への社会的信頼の低下
  • 誠実に研究している研究者への不公正な競争上の不利益

論文撤回を追跡するデータベースには毎年多数の撤回論文が登録されており、その多くはFFPに起因する。一度撤回された論文は検索エンジンでも長く残り、著者名と結びつくため、キャリアへの影響は発覚後も続く。

研究不正を防ぐ実践チェックリスト

FFPを防ぐための最善策は、誠実な研究プロセスの日常的な習慣化だ。以下のチェックリストを参考に、研究の各段階で自己点検を行ってほしい。

データ収集・管理

  • 実験ノートに日時・条件・結果を逐一記録している
  • 生データ(RAWデータ)は加工前の形式で保存している
  • 外れ値の除外基準をデータ分析前に事前設定している
  • 仮説を支持しないネガティブデータも記録・保存している

引用・文献管理

  • 他者の文章・アイデアを使用する際は必ず出典を明示している
  • 直接引用には引用符(「 」または” “)を使用している
  • パラフレーズ(間接引用)も出典を記載している
  • 原著にアクセスできない場合は二次引用であることを明示している
  • 過去の自分の著作物を再使用する際も出典を示している

引用ルールの詳細は論文の引用ルール完全ガイド2026|本文中の引用の書き方(直接・間接)で確認できる。

独自性の自己点検

  • 提出前に剽窃チェックツールで類似度を確認している
  • AIの出力をそのまま使用せず、自分の言葉で再構成している
  • AI使用を大学のガイドラインに従い開示している

提出前の自己点検には剽窃チェックの方法と独自性の高め方|自己点検の実践ガイド2026が役立つ。また、Tesifyでは論文の独自性確認と誠実な研究行為の支援ツールを提供しており、提出前に客観的な自己点検を行うことができる。

よくある質問(FAQ)

自己盗用は本当に研究不正になりますか?

なります。過去に提出・発表した自分の文章を、出典表示なしに新しい論文で再使用することは「自己盗用(Self-Plagiarism)」として研究倫理違反に問われます。著作権が自分にあっても、読者・審査者に「新規の内容だ」と誤解させることが問題です。過去の成果を参照する際は正式に引用してください。

グラフの縦軸を0始まりにしないのは改ざんですか?

必ずしも改ざんではありませんが、意図的に差異を誇張する目的で軸範囲を操作する場合は問題になります。軸範囲を変更した場合は、図のキャプションや本文でその理由を明示することが推奨されます。操作の目的と透明性が判断基準です。

学部生のレポートにも文科省ガイドラインは適用されますか?

文科省ガイドラインは主に発表を前提とした研究活動を対象としていますが、各大学は独自の学生向け学術的誠実性ポリシーを設けており、学部生のレポート・卒業論文にも適用されます。FFPに相当する行為を行った場合、単位剥奪・退学処分の対象となる場合があります。

仮説を支持しない結果を省略するのは捏造にあたりますか?

捏造(存在しないデータの作成)とは厳密には異なりますが、「選択的報告(Selective Reporting)」として研究倫理上の重大な問題とみなされます。仮説を支持しない結果も含めてすべてのデータを記録・報告することが誠実な研究行為の原則です。事前に分析計画を登録するプレレジストレーション(Pre-registration)も有効な対策です。

ChatGPTで文章を生成して使うと盗用になりますか?

AI生成テキストの無申告使用は「盗用」に分類されるケースが増えており、多くの大学が明示的な禁止または申告義務を設けています。盗用の定義(「適切な表示なく流用すること」)にAI生成コンテンツを含める解釈が広がっているためです。AI出力を使用する場合は、使用目的・ツール名・人間による修正の範囲を開示することが求められます。

研究不正を告発するにはどこに相談すればよいですか?

所属大学・研究機関の研究倫理窓口(公正研究推進室など)が一次的な相談・告発先です。機関内での対応が不十分な場合や機関が関与している場合は、文部科学省が設置する窓口への申し出も可能です。詳細は文部科学省の研究不正対応ページを参照してください。

まとめ — 誠実な研究が最強の防御策

捏造・改ざん・盗用(FFP)は単なる規則違反ではなく、科学と社会への信頼を損なう行為だ。文科省ガイドラインはその枠組みを示しているが、最終的には一人ひとりの研究者・学生の誠実な姿勢が研究の品質を守る。

データの透明な記録、正確な引用、提出前の独自性自己点検を習慣化することで、研究不正リスクは大幅に低減できる。Tesifyでは、論文の独自性確認と誠実な研究行為を支援するツールを提供している。

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