日本の博士号取得者数 最新データ2026|人口当たりの国際比較と分野別の推移
人口100万人当たりの博士号取得者数の国際比較において、日本は2021年度時点で126人にとどまっている。韓国(344人)・英国(342人)・ドイツ(330人)の3分の1以下という水準であり、主要先進国の中で最も低い部類に入る(NISTEP「科学技術指標2024」調査資料-341、2024年8月)。日本の研究力低下が繰り返し指摘される文脈で、博士号取得者数の国際比較は研究人材の厚みを測る重要な指標の一つだ。
絶対数でみると、日本の博士課程修了者(学術博士・専門職博士を含む)は2021年度に15,767人を記録した(NISTEP「科学技術指標2024」)。2003〜2006年前後のピーク後、長期的な減少傾向が続いたが、2023年度の博士課程入学者数は約1.5万人と前年度比4.4%増に転じた(文部科学省「学校基本調査」令和5年度)。本稿では、検証可能な公式統計のみを用いて日本の博士号取得者をめぐるデータを体系的に整理する。
データ速報
- 日本の博士号取得者(2021年度):15,767人(NISTEP 科学技術指標2024)
- 人口100万人当たり:126人(韓国344人・英国342人・ドイツ330人に対し約3分の1)
- 2023年度入学者数:約1.5万人(前年度比+4.4%、文部科学省 学校基本調査)
- 社会人入学者割合:41.5%(2023年度、2003年度の21.7%から倍増)
日本の博士号取得者数の推移
文部科学省「学校基本調査」およびNISTEP「科学技術指標2024」によると、日本の博士課程修了者の総数は1990年代後半から2000年代初頭にかけて急増した。2003〜2006年前後がピークとされており、その後は長期的な減少または横ばいが続いた。直近では2023年度に入学者数が増加に転じており、博士課程全体の規模が緩やかな回復軌道に入った可能性がある。
| 年度 | 主な数値 | 備考・出典 |
|---|---|---|
| 2003年度前後 | ピーク期 | 男女ともに入学者数・修了者数が最多水準(NISTEP 科学技術指標2024) |
| 2021年度 | 修了者15,767人 | NISTEP「科学技術指標2024」(調査資料-341) |
| 2023年度(入学者) | 約1.5万人 | 前年度比+4.4%(文部科学省「学校基本調査」令和5年度) |
男女別では、ピーク時を基準とした場合、2023年度の男性入学者数はピーク比約24%減である一方、女性はピーク比約4%減にとどまっており、女性の落ち込みは相対的に小さい(NISTEP「科学技術指標2024」)。
人口百万人当たりの国際比較
博士号取得者数の国際比較においては、人口規模の違いを補正するため「人口100万人当たりの取得者数」が標準的な指標として用いられる。NISTEP「科学技術指標2024」が示す2021年度データでは、日本は主要国の中で際立って低い水準にある。
| 国・地域 | 人口100万人当たり取得者数 | 出典 |
|---|---|---|
| 韓国 | 344人 | NISTEP 科学技術指標2024 |
| 英国 | 342人 | NISTEP 科学技術指標2024 |
| ドイツ | 330人 | NISTEP 科学技術指標2024 |
| 日本 | 126人 | NISTEP 科学技術指標2024(2021年度) |
| 中国 | 58人 | NISTEP 科学技術指標2024 |
「人口100万人当たりの博士号取得者数は、日本が2021年度で126人であり、比較対象国の中で最も少ない。」
— NISTEP「科学技術指標2024」(調査資料-341、2024年8月)
時系列でみると、2000年代初頭、米国と韓国の人口100万人当たり取得者数は日本と同程度の水準だった。しかし両国はその後増加を続け、特に韓国は2020年代初頭にドイツを上回る水準に達した(NISTEP「科学技術指標2024」)。日本は同期間にほぼ横ばいか微減で推移しており、相対的な地位が大きく低下した。また絶対数でも米国は年間約95,000人、中国は約82,000人、ドイツは約28,000人に対し、日本は約16,000人にとどまる(NISTEP「科学技術指標2024」)。

分野別の内訳
日本の博士号取得者の分野別構成は、保健系(医学・歯学・薬学・看護)に大きく偏っている点が特徴的だ。NISTEP「科学技術指標2024」に基づく2021年度データを以下に示す。
| 分野 | 人数 | 構成比 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 保健(医・歯・薬・看護) | 6,796人 | 43.1% | NISTEP 科学技術指標2024 |
| 工学 | 3,436人 | 21.8% | NISTEP 科学技術指標2024 |
| 人文・社会科学 | 1,456人 | 9.2% | NISTEP 科学技術指標2024 |
| 理学 | 1,326人 | 8.4% | NISTEP 科学技術指標2024 |
| 農学 | 880人 | 5.6% | NISTEP 科学技術指標2024 |
| その他 | 1,873人 | 11.9% | NISTEP 科学技術指標2024(算出) |
2023年度の入学者数でみても、保健系が約6,000人(全体の約40%)と最大で、工学系が約3,000人で続く。理学系・人文科学系・社会科学系はそれぞれ1,000人程度にとどまった(文部科学省「学校基本調査」令和5年度)。工学系は2010年代後半から増加傾向に転じており、2023年度は全分野で前年度比増となった。
保健系の構成比が高い背景には、医師・歯科医師が卒業後に博士課程に進学する国内特有の慣行がある。これを除いた自然科学・工学系のみで比較した場合、日本の国際的な立ち位置はさらに低くなると指摘されている。

社会人博士の動向
近年の博士課程の大きな変化の一つが社会人入学者の増加だ。2023年度の博士課程入学者のうち社会人は約6,000人(41.5%)を占め、2003年度の21.7%と比べて約2倍の割合に増加した(NISTEP「科学技術指標2024」)。
「社会人の博士課程入学者の割合は2003年度の21.7%から2023年度の41.5%へと、20年間で倍増した。」
— NISTEP「科学技術指標2024」(調査資料-341、2024年8月)
専攻別では保健系が社会人博士全体の大きな割合を占めており、医師・薬剤師・看護師などが現職のまま博士号を取得するルートが定着していることを示している。社会人入学者数は2018年度以降に一時的な減少期を経たが、2023年度には再び増加に転じた。政府は「博士人材活躍プラン」(文部科学省・内閣府・経産省等連携、2023年策定)において、社会人博士のさらなる拡充と産業界との連携強化を政策目標の一つに掲げており、複数の大学が社会人向け短期集中型の博士課程プログラムを新設・拡充している。
女性の博士号取得者
博士後期課程在籍者に占める女性の割合は、分野によって大きく異なる。内閣府「第6期科学技術・イノベーション基本計画」関連調査(2021年)が引用する文部科学省「学校基本調査」データによると、2020年度時点での分野別女性比率は以下のとおりだ。
| 分野 | 女性比率 | 出典 |
|---|---|---|
| 人文科学 | 53% | 内閣府・文部科学省「学校基本調査」2020年度 |
| 社会科学 | 37% | 内閣府・文部科学省「学校基本調査」2020年度 |
| 農学 | 36% | 内閣府・文部科学省「学校基本調査」2020年度 |
| 医・歯・薬学 | 31% | 内閣府・文部科学省「学校基本調査」2020年度 |
| 理学 | 20% | 内閣府・文部科学省「学校基本調査」2020年度 |
| 工学 | 19% | 内閣府・文部科学省「学校基本調査」2020年度 |
博士課程入学者全体でみると、ピーク(女性は2004年度)と比較して2023年度は約4%減にとどまっており、男性がピーク比約24%減であるのと対照的だ(NISTEP「科学技術指標2024」)。すなわち、博士課程志望者の減少は男性においてより深刻であり、全体的な男女比率の変化につながっている。日本の女性研究者の割合と国際比較については別稿で詳しく分析している。
修士課程からの進学率
修士課程修了者のうち博士課程に進学した割合(修士→博士進学率)は、2010年代以降の長期的な減少傾向を経て、2019年度を境に微増傾向に転じた。2023年度の進学率は9.7%となっている(NISTEP「科学技術指標2024」)。
修士修了者の10人に1人未満しか博士課程に進まないこの状況は、日本の高等教育制度において「修士→就職」の流れが依然として支配的であることを示している。欧米主要国では学部卒から直接5年制一貫博士課程に進学するルートが主流であるため、単純な数値比較には限界があるが、日本の博士課程進学のハードルの高さを示す一指標として広く参照されている。
博士課程の入学者数が増加に転じた2023年度以降、この進学率がさらに改善するかどうかが今後の注目点だ。大学中退率のデータと合わせて参照することで、日本の高等教育システム全体の実態が浮かび上がる。
なぜ日本の博士号取得者は少ないのか
博士号取得者数の国際比較で日本が低位に甘んじている背景には、構造的な要因が複数重なっている。
- 経済的インセンティブの弱さ:日本の労働市場では、博士号取得者の賃金プレミアムが欧米ほど顕著ではない。多くの大企業が博士卒を「専門職」として積極採用する体制を十分に整えてこなかった歴史がある。
- 修了年齢と新卒採用慣行のミスマッチ:博士課程修了時の年齢は概ね28〜30歳以上となるため、一括新卒採用を重視する日本企業の採用慣行とかみ合わず、就職活動上の不利を懸念する学生が多い。
- 経済的支援の不足:日本学術振興会(学振)DC特別研究員の採択枠は限られており、多くの博士課程学生が経済的に厳しい環境で研究を継続している。
- 産業界での活用機会の限定:製造業・IT・金融等での博士号人材の活用が欧米ほど進んでおらず、博士号取得の「費用対効果」が見えにくい状況が続いている。
政府はこれらの課題に対応するため、2023年に「博士人材活躍プラン」(文部科学省・内閣府・経産省等連携)を策定し、博士課程学生への経済支援拡充・産学連携強化・キャリアパス多様化を政策目標に掲げている。また国立大学の博士課程定員増や授業料免除制度の拡充も進められており、2023年度の入学者数増はこうした政策の初期的な効果を反映している可能性がある。
東京大学大学院への進学をはじめ、国内主要大学の大学院入試については各研究科の公式情報で最新の選考基準を確認してほしい。

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よくある質問(FAQ)
日本の博士号取得者数は年間何人ですか?
2021年度は15,767人です(NISTEP「科学技術指標2024」調査資料-341)。2023年度の博士課程入学者数は約1.5万人で、前年度比4.4%増加しました(文部科学省「学校基本調査」令和5年度)。
日本の博士号取得者数は国際比較でどのくらいの水準ですか?
NISTEP「科学技術指標2024」によると、人口100万人当たりの博士号取得者数は日本が126人(2021年度)であるのに対し、韓国344人・英国342人・ドイツ330人と、日本は主要国の約3分の1以下の水準です。2000年代初頭は米国・韓国と同水準でしたが、両国の増加に対して日本は横ばいが続きました。
日本の博士課程で取得者が最も多い分野はどこですか?
保健(医学・歯学・薬学・看護)が最大の分野で、2021年度は全体の43.1%(6,796人)を占めます。次いで工学系が21.8%(3,436人)です(NISTEP「科学技術指標2024」)。医師・歯科医師が卒業後に博士課程へ進学する慣行が、保健系の高い構成比につながっています。
社会人でも博士号を取得できますか?その割合は?
取得可能です。2023年度の博士課程入学者のうち社会人は41.5%(約6,000人)を占め、2003年度の21.7%から約20年で倍増しています(NISTEP「科学技術指標2024」)。医療・製薬分野での社会人博士が特に多い状況です。
博士後期課程における女性の割合はどのくらいですか?
2020年度データでは、人文科学系が53%と最も高く、工学系・理学系が19〜20%と最も低い水準です(内閣府・文部科学省「学校基本調査」)。男性の入学者数の減少率が女性より大きいため、全体的な女性比率は緩やかに上昇傾向にあります。
修士課程から博士課程への進学率は何%ですか?
2023年度は9.7%です(NISTEP「科学技術指標2024」)。2010年代以降は減少傾向が続いていましたが、2019年度を境に微増傾向に転じています。修士修了者の10人に1人未満しか博士課程に進まない状況が続いています。
データ更新情報は、文部科学省「学校基本調査」(毎年12月確定値公表)およびNISTEP「科学技術指標」(毎年8月公表)で確認できる。本稿の数値は2024年8月公表のNISTEP「科学技術指標2024」(調査資料-341)および文部科学省「学校基本調査」令和5年度確定値に基づく。
