卒論の中間発表で求められるのは完成した結果ではなく、問いと方法が妥当であることの説明である。
「まだデータが取れていないから話すことがない」という相談は多い。だが中間発表の目的は成果報告ではなく、この方向で進めてよいかを教員に確認する場だ。むしろ完成間近の発表より、方向修正が効く段階のほうが本来の趣旨に合っている。
中間発表では何を話すのか?
分野を問わず、次の5項目を順に話す構成が最も安全だ。持ち時間10分なら、括弧内の配分を目安にする。
- 研究の背景と問い(2分)——なぜこのテーマなのか、何を明らかにしたいのか
- 先行研究と研究ギャップ(3分)——何がすでに分かっていて、何が分かっていないか
- 研究方法(3分)——誰を対象に、何を、どう測る/分析するか
- 現在の進捗(1分)——どこまで終わり、何が残っているか
- 今後のスケジュール(1分)——提出までの逆算計画

配分から分かるとおり、先行研究と方法に6割を割く。結果がまだ無いのは前提であり、そこを詫びる時間は要らない。問いの立て方に迷いがある場合はリサーチクエスチョンの立て方で整理し直してから資料を作るとよい。
データがまだ無い段階でどう見せるのか?
| 進捗段階 | 見せるもの | 避けること |
|---|---|---|
| テーマ確定のみ | 先行研究の整理表、絞り込みの経緯 | テーマの広さをそのまま話す |
| 方法設計中 | 調査計画、質問紙の草案、対象者の選定条件 | 「まだ決めていません」で終える |
| データ収集中 | 回収状況、暫定的な記述統計 | 少数データで結論を語る |
| 分析中 | 予備分析の結果、想定される解釈 | 有意差の有無だけを報告する |
どの段階でも、先行研究の整理表は必ず1枚用意する。誰が何を明らかにし、何が残っているかを一覧にしたスライドは、進捗が浅くても「文献は読んでいる」ことを示せる。作り方は先行研究のまとめ方にまとめている。

どんな質問が来るのか?
中間発表の質疑は、口頭試問と違って指導のための質問が中心になる。頻出は次の4つだ。
- 「そのテーマ、範囲が広すぎませんか」——絞り込みの候補を2〜3案用意しておく
- 「先行研究で似た研究はありませんか」——近い研究を挙げ、自分との違いを1文で言えるようにする
- 「その方法で本当に測れますか」——測定指標と概念の対応を説明できるようにする
- 「間に合いますか」——逆算スケジュールを見せて答える
4つ目は形式的な確認に見えて重要だ。卒論スケジュールの立て方で作った月別計画をスライドに入れておけば、その場で示せる。答えに詰まったときの対応は口頭試問で答えられない質問が出たらと同じ考え方が使える。
スライドは何枚作るのか?
10分発表なら8〜12枚が目安になる。1枚あたり1分弱の計算だ。内訳の例を示す。
- 表紙(タイトル・氏名・指導教員)1枚
- 背景と問題意識 1〜2枚
- リサーチクエスチョン 1枚
- 先行研究の整理表 1〜2枚
- 研究方法 2〜3枚
- 進捗状況 1枚
- 今後のスケジュール 1枚
文字を詰め込みすぎるのが最頻出の失敗だ。1枚あたりの文字数を絞り、口頭で補う。スライド設計の詳細は卒論発表スライドの作り方を参照してほしい。
よくある質問
進捗がほとんどありません。正直に言うべきですか?
言うべきです。ただし「何もしていません」ではなく、「文献レビューまで完了し、調査設計に着手した段階です」のように到達点で表現してください。そのうえで、遅れを取り戻す計画を示します。
テーマがまだ固まっていない場合はどうしますか?
候補を2〜3案並べ、それぞれの実現可能性と課題を示す構成にします。この形なら、その場で教員から絞り込みの助言を得られ、発表そのものが前進になります。テーマ選定の考え方は卒論のテーマの決め方にあります。
中間発表の結果は成績に影響しますか?
大学によりますが、多くの場合は単独で成績を決めるものではありません。ただし発表内容の記録が最終審査の参考にされることはあります。指摘への対応履歴が残る点を意識してください。
質問に答えられなかった場合、どうすればいいですか?
「持ち帰って確認します」と伝え、必ず後日回答してください。中間発表の質問は課題の提示であることが多く、次回までに解決した形で示すのが最も評価されます。
他の学生の発表は聞くべきですか?
聞いてください。同じ研究室の教員がどこを問うかの傾向が分かり、自分の発表への備えになります。質問と回答をメモしておくと想定問答の材料になります。
発表資料と論文原稿を分断しない
中間発表のスライドを作り、そのあと論文を一から書き直す学生は多い。だが発表で整理した問い・先行研究・方法は、そのまま序論と方法章の骨格になる。Tesifyは、章立ての整理から本文の下書き・推敲までを同じ画面で進められるため、発表準備で作った構造を論文にそのまま引き継ぎやすい。
