短期大学・高等専門学校・専門学校を卒業した人は、大学に入り直さなくても学士の学位を取得できます。根拠は学位規則第6条で、必要な学修を積み上げたうえで大学改革支援・学位授与機構(NIAD-QE)の審査に合格することが条件です。

そもそもどういう制度なのか?
学位規則は、学位を授与できる主体を大学だけに限っていません。第四章が「独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う学位授与」にあてられており、第6条・第7条がその要件を定めています。
大学が授与する学士(第2条)は「当該大学を卒業した者」に対して行うものですが、機構の学士は卒業ではなく、積み上げた学修と審査によって授与されます。これが単位積み上げ型と呼ばれる仕組みで、機構は申請案内書「新しい学士への途」を公開し、学位授与電子申請システムを運用しています。
誰が申請できるのか?
第6条第1項は、まず基礎となる資格を定めています。短期大学(専門職大学の前期課程を含む)または高等専門学校を卒業した者に加えて、次のいずれかに該当する者が対象です。
| 号 | 該当する人 |
|---|---|
| 一 | 大学に2年以上在学し62単位以上を修得した者 |
| 二 | 高等学校(中等教育学校後期課程・特別支援学校高等部を含む)の専攻科の課程を修了した者のうち、学校教育法第58条の2により大学に編入学できるもの |
| 三 | 専修学校の専門課程を修了した者のうち、学校教育法第132条により大学に編入学できるもの |
| 四 | 外国において学校教育における14年の課程を修了した者 |
| 五 | その他これらと同等以上の学力がある者として文部科学大臣が別に定める者 |
第三号が実務上とくに重要です。専門学校(専修学校専門課程)の修了者にも道が開かれていますが、条件は「学校教育法第132条により大学に編入学することができる」ことです。専門課程を修了しさえすれば自動的に該当するわけではありません。自分の修了課程が編入学の要件を満たすかを、まず在籍校か機構に確認してください。
また第一号は「中退」ではなく要件です。大学に2年以上在学して62単位以上を修得していれば、卒業していなくても基礎資格になります。事情があって大学を離れた人にとって、これは現実的な選択肢です。
基礎資格があれば申請できるのか?
いいえ。第6条第1項は基礎資格に加えて、一定の学修を行うことを求めています。条文が挙げるのは次の経路です。
- 大学における一定の単位の修得(大学設置基準第31条第1項の規定による単位等)——科目等履修生として大学の授業を履修し、単位を積み上げる方法です。
- 短期大学または高等専門学校に置かれる専攻科のうち、機構が定める要件を満たすものにおける一定の学修——いわゆる認定専攻科のルートです。
- その他、文部科学大臣が別に定める学修。
認定専攻科かどうかで手続きの重さが変わります。機構は「機構認定短期大学・高等専門学校専攻科一覧」を公表しているため、進学前あるいは在学中の早い段階で自分の専攻科が認定を受けているかを確認してください。高専専攻科での研究の進め方は 高専 専攻科「特別研究」の書き方2026 にまとめています。
そして最後に、機構が行う審査に合格することが必要です。第7条は、この審査に「大学の教員等で高度の学識を有する者の参画を得る」と定めており、大学の学位と同等の水準が担保される仕組みになっています。

準備は何から始めるのか?
制度が複雑なので、順序を守ることが最も効きます。
- 自分の基礎資格を確定する。上の表のどれに当たるか。専門学校卒の場合は編入学要件を満たすかの確認が先です。
- 取得したい学位の「専攻の区分」を決める。区分によって必要な学修の内容が変わります。ここを曖昧にしたまま単位を取り始めると、積み上げた単位が算入されない事態が起こります。
- 不足する学修をどう積むか決める。認定専攻科に在学しているのか、科目等履修生として単位を取るのか。科目等履修生の制度そのものは 研究生・科目等履修生とは2026 で扱っています。
- 申請案内書「新しい学士への途」を入手し、最新の要件で確認する。提出書類と申請時期はここに集約されています。
- 単位修得証明書などの書類を早めに手配する。複数校にまたがる場合、発行に時間がかかります。
⚠️ 本記事は制度の骨格を条文に沿って説明したものです。申請区分ごとの必要単位数、審査の方法、申請時期、手数料は機構が定めており、改定もあります。必ず機構の最新の申請案内と、在籍校・出身校の担当部署で確認してください。本記事の情報だけで申請計画を確定させないでください。
大学に入り直すのと、どちらがよいのか?
目的によります。学位そのものが目的なら機構ルート、学生生活や研究指導を含めた経験が目的なら編入学、という整理が実務的です。
| 比較軸 | 学位授与機構ルート | 大学への編入学 |
|---|---|---|
| 在籍 | 大学への在籍は必須でない | 大学に在籍する |
| 学修の形 | 単位の積み上げ+機構の審査 | 編入後の課程を修了 |
| 働きながら | 両立しやすい | 通学の負担が大きい |
| 指導 | 大学の指導教員はつかない | ゼミ・研究指導を受けられる |
| 授与主体 | 大学改革支援・学位授与機構 | その大学 |
| 学位の種類 | いずれも「学士」。制度上の区別はない | |
授与される学位は同じ「学士」です。大学院進学の出願資格としても学士は学士として扱われます。大学院への接続を考えている場合は 大学院進学率の最新データ2026、働きながら学ぶ選択肢の全体像は 社会人大学院ガイド2026 を参照してください。学位そのものの制度上の位置づけは 論文博士とは?課程博士との違いFAQ2026 でも扱っています。
なお、短大・高専・専門学校の規模感を把握しておきたい場合は 高専・専門学校・短大の学生数データ2026、専門学校での成果物の作り方は 専門学校の課題研究・卒業研究の書き方2026 にまとめています。
よくある質問
大学を中退していても学士を取れますか?
可能な場合があります。学位規則第6条第1項第一号は「大学に2年以上在学し62単位以上を修得した者」を基礎資格として挙げており、卒業していることは求められていません。ただしこれに加えて一定の学修と機構の審査合格が必要です。
専門学校を卒業していれば申請できますか?
専修学校の専門課程を修了した者のうち、学校教育法第132条により大学に編入学することができるものが対象です。専門課程の修了だけで自動的に該当するわけではないため、自分の課程が編入学要件を満たすかを確認してください。
高専の専攻科に行けば自動的に学士になりますか?
なりません。専攻科での学修は要件の一部で、機構への申請と審査合格が必要です。また、専攻科が機構の定める要件を満たすもの(認定専攻科)かどうかで手続きが変わります。機構が公表する一覧で確認してください。
機構が授与する学士は大学の学士と違いますか?
学位としての区別はありません。いずれも「学士」です。学位規則第7条は機構の審査に大学の教員等で高度の学識を有する者の参画を得ると定めており、水準が担保される仕組みになっています。
必要な単位数は何単位ですか?
取得を目指す専攻の区分によって異なり、機構が定めています。条文は「一定の単位の修得」「一定の学修」と規定するにとどまるため、具体的な数は申請案内書「新しい学士への途」と機構の最新情報で確認してください。
働きながらでも取得できますか?
この制度は大学への在籍を必須としないため、科目等履修生として単位を積み上げる形なら就業と両立しやすい設計です。ただし専攻の区分に沿って計画的に単位を取る必要があり、区分を決めずに履修を始めると算入されない単位が生じます。
