二次引用(孫引き)の書き方2026|SIST 02・APA別の「○○に引用」表記と原典確認の原則

二次引用(孫引き)の書き方2026|SIST 02・APA別の「○○に引用」表記と原典確認の原則

卒論や修論の執筆中、「読みたい原典が手に入らないが、他の論文でその内容が引用されている」という状況は珍しくない。この状況での引用を二次引用(孫引き)と呼ぶ。二次引用 書き方を誤ると、参考文献リストに読んでいない文献が紛れ込んだり、原典の文脈を誤解したまま論文に記載したりするリスクがある。本記事では、SIST 02とAPA 7版それぞれの「○○に引用」表記ルール、参考文献リストへの正しい記載方法、そして二次引用を最小限にとどめるべき理由を、具体例と対照表で解説する。

30秒まとめ

二次引用とは、原典を直接読まずに他者がその原典を引用した文献から孫引きすること。やむを得ない場合のみ許容され、本文中では「○○(年)は△△(年)に引用」のように明記し、参考文献リストには実際に読んだ文献(△△)のみ記載するのが絶対ルール。SIST 02とAPAで表記形式が異なるため、スタイルに合わせた書き方を確認しよう。

二次引用(孫引き)とは何か

引用には大きく分けて一次引用と二次引用がある。一次引用とは研究者が原典(一次文献)を直接読んで引用すること。二次引用(孫引き)とは、原典には直接当たらず、原典を引用している別の文献(二次文献)を通じてその内容を引くことを指す。

表1:引用の種類の比較
種類 定義 参考文献リスト
一次引用 原典を直接読んで引用 原典を記載
二次引用(孫引き) 原典を読まず他の文献経由で引用 実際に読んだ二次文献のみ

また、二次引用を直接引用や間接引用(パラフレーズ)と混同しないよう注意が必要だ。直接引用は原文を一字一句そのまま引き写すこと、間接引用は内容を自分の言葉で要約する方法であり、どちらも原典を直接読んでいることが前提となる。二次引用はこれとは別次元の問題であり、誰の著作から学んだかという出典の連鎖に関わる。論文の引用ルール完全ガイド2026では、直接引用・間接引用のルールも詳しく解説しているので合わせて確認してほしい。

二次引用を避けるべき理由

学術論文において二次引用は原則として避けるべきとされる。主な理由は次の三点だ。

  1. 誤引用リスク:二次文献の著者が原典の内容を誤解・省略・意図的に切り取っている可能性がある。孫引きすることで、そのエラーをそのまま自分の論文に持ち込む危険がある。
  2. 文脈の欠落:原典の主張はその前後の議論の文脈と切り離せない。二次文献は必ずしも原典の文脈を十分に再現していない。
  3. 学術的信頼性の低下:指導教員や査読者から「なぜ原典に当たらないのか」と問われる。重要な命題への孫引きは論文の信頼性を損なう。

二次引用を検討する前に、CiNii Research・Google Scholar・大学図書館の相互貸借(ILL)・国立国会図書館デジタルコレクションを活用して原典の入手を試みることが必須ステップだ。入手困難と判断してから初めて、以下の孫引き表記に移る。

やむを得ない場合の原則

原典が絶版・入手不能・外国語で翻訳がない・機関アーカイブのみなど、合理的な努力を尽くしても入手できない場合にのみ二次引用が許容される。その際の基本原則は次の三点に集約される。

  • 本文中に原典と二次文献の両方を明示する
  • 参考文献リストには実際に読んだ二次文献のみを記載する(原典は記載しない)
  • 孫引きであることが読者に分かる形で表記する
二次引用(孫引き)の引用連鎖を示すイラスト:原典から二次文献、そして卒論へと矢印でつながる流れ図
二次引用(孫引き)の引用連鎖:原典 → 二次文献 → 自分の論文という流れを正確に明示することが求められる

APA 7版での書き方と例

APA(American Psychological Association)のPublication Manual第7版§8.6は、二次引用を「indirect citation(間接引用)」として明確に規定している。

本文中の書き方

APA 7版では、原典の著者名と発行年を先に示し、続けて「as cited in 二次文献著者名, 年」と記載する。日本語論文では「○○に引用」という表現が対応する。

表2:APA 7版 二次引用の本文中表記
パターン 表記例
括弧内引用(英語論文) (Smith, 2003, as cited in Jones, 2019)
括弧内引用(日本語論文) (田中,1995,佐藤,2010に引用)
本文組み込み型(英語) Smith (2003, as cited in Jones, 2019) argued that…
本文組み込み型(日本語) 田中(1995,佐藤,2010に引用)は~と述べている。
ページ番号付き(日本語) (田中,1995,p. 45,佐藤,2010に引用)

原典の発行年が不明な場合は年を省略し、「(田中,佐藤,2010に引用)」のように記載する。ページ番号は原典の年の直後に付ける形が標準的だ。

APA 7版の詳細仕様についてはAPA Style公式ガイドライン(Secondary Sources)でも確認できる。

参考文献リストへの記載(APA 7版)

参考文献リストには実際に手にした文献(二次文献=佐藤)のみを通常通り記載する。原典(田中)は本文中での明示で十分であり、リストには掲載しない。

佐藤 直樹 (2010). 認知発達と記憶学習の関係. 心理学研究, 81(2), 120–135. https://doi.org/10.xxxx/xxxxx

SIST 02での書き方と例

SIST 02(科学技術情報流通技術基準02)は、日本の理工系・社会科学系で広く採用されている引用標準だ。二次引用の書き方を明示的に定めた条文はないが、著者-年方式と番号方式でそれぞれ慣行として定着した表記がある。

著者-年方式の場合

SIST 02では著者名と年の間にカンマではなくスペースを用いることが多い(例:田中 1995、APA形式:田中,1995)。孫引きの場合、セミコロン(;)で原典と二次文献を区切り「に引用」を付加するのが慣行的な書き方だ。

表3:SIST 02(著者-年方式)二次引用の表記例
パターン 表記例
括弧内引用 (田中 1995;佐藤 2010 に引用)
本文組み込み型 田中(1995;佐藤 2010 に引用)は~と指摘している。
ページ番号付き (田中 1995:p. 45;佐藤 2010 に引用)

番号方式の場合

番号引用方式では、本文中に角括弧または上付き数字で番号を振る。孫引きの場合は同じ番号の文献注に原典情報を付記するのが一般的な方法だ。

本文:
「学習効率は環境温度に依存する [2]。」

参考文献注(番号方式):
[2] 田中太郎. 学習環境と認知負荷. 教育工学誌. 1995;12(3):45-60. (佐藤直樹 2010 に引用)

参考文献リストへの記載方法

スタイルを問わず、二次引用の場合に参考文献リストに記載するのは実際に読んだ二次文献のみという原則は共通している。原典(田中, 1995)は本文中で明示するが、リストには掲載しない。

表4:スタイル別まとめ — 本文中と参考文献リストの対応
スタイル 本文中の表記 参考文献リスト
APA 7版 (田中,1995,佐藤,2010に引用) 佐藤(2010)のみ
SIST 02
(著者-年)
(田中 1995;佐藤 2010 に引用) 佐藤(2010)のみ
SIST 02
(番号)
番号 + 文献注に原典情報 佐藤(2010)のみ

原典を参考文献リストに記載することは「自分がそれを読んだ」という誤情報を提供することになる。査読時に「この文献を読んだか」と問われた場合、正直に答えられないのであれば、孫引きを避けるか、上記の形式に従って正確に表記すべきだ。

参考文献全般の書き方は参考文献の書き方完全ガイド(SIST 02・APA対応)で一覧できる。ウェブサイトを二次引用する際はウェブサイトの参考文献の書き方2026も参照されたい。図表を孫引きする特殊なケースについては図表の出典・引用の書き方2026で詳しく扱っている。

APA・SIST 02スタイルの二次引用表記フォーマットを示すイラスト:参考文献リストへの記載ルールを視覚的に表現
APA・SIST 02スタイル別の二次引用表記:参考文献リストには実際に読んだ二次文献のみ記載する

よくある間違いと注意点

  • 原典を参考文献リストに載せる:読んでいない文献を掲載することは学術的誠実性の問題になる。本文中に記すのみで十分だ。
  • 「に引用」を省略する:二次引用であることを隠すことは不正確な引用につながる。読者が原典を追いかけたとき、二次文献経由とは気づかない形になる。
  • 孫引きを連鎖させる:二次文献が別の二次文献から孫引きしていた場合、誤りが連鎖する。可能な限り一次文献に当たることが鉄則だ。
  • スタイルの混在:APAとSIST 02の表記を同じ論文内で混在させてはならない。投稿先・指導方針に従って統一する。
  • 発行年不明の原典を無視する:発行年が不明な場合は「(著者名,n.d.,二次文献著者名,年に引用)」(APAの場合)と記載する。年を省略したまま表記しないこと。

よくある質問(FAQ)

二次引用は何回まで許容されますか?

回数に公式な上限はないが、卒論・修論では多用を避けるのが原則だ。指導教員によっては「孫引きは1〜2件に留めること」と指導するケースもある。論文の中心的な命題や先行研究の核心部分を二次引用することは特に問題となりやすい。

英語の原典を日本語の二次文献で孫引きする場合の書き方は?

ルールは変わらない。本文中に原典情報(英語著者名・年)を記し、「〇〇(日本語文献,年)に引用」と付記する。参考文献リストには日本語の二次文献のみ記載する。例:(Smith, 2010,佐藤,2020に引用)→ 参考文献:佐藤(2020)のみ記載。

孫引きを隠して引用した場合はどうなりますか?

原典を読んでいないにもかかわらず直接引用したかのように記載することは不正引用とみなされる場合がある。口頭試問で「この原典のどの部分を確認したか」と問われた際に答えられない状況は非常にリスクが高い。二次引用であることを明示することは正直さと学術的誠実性の証でもある。

大学によってルールは異なりますか?

基本原則(二次文献のみリスト記載・本文中に明示)は共通しているが、投稿先の学会や指導教員の方針によって細かい表記が異なる場合がある。所属学部・研究科の論文執筆マニュアルを必ず確認すること。

国立国会図書館(NDL)のデジタルコレクションで原典が見つかった場合は一次引用できますか?

はい。NDLデジタルコレクションの資料は公式に閲覧・複写できるため、そこで原典を確認できれば一次引用として扱える。その場合、参考文献リストには原典の書誌情報(著者名・タイトル・出版年・出版社等)を通常通り記載する。

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